三越伊勢丹、大阪百貨店戦争で敗北・店舗大幅縮小阪急百貨店うめだ本店が2012年11月にグランドオープンし、同店の本格営業で、梅田地区は、売り場面積では東京・新宿駅 周辺をしのぐ「日本一の百貨店集積・激戦区」になった。また、百貨店が入居するのは、すべて超高層ビルである。(阪神は 建て替え決定で準備中)。 梅田地区では、百貨店の増床や新規開店が相次ついだ。2011年4月に大丸梅田店が増床オープンし、翌月にはJR大阪三 越伊勢丹が開店。阪急うめだ本店は、全面改修工事を行っていたが2012年12月にグランドオープンした。 売り場面積では、阪神百貨店梅田本店を加えた計4店で約24.7万平方メートルに増え、増床、開店ラッシュ前の約1.5倍 に急拡大。新宿地区4店の21.2万平方メートルを大きく上回ることになる。 しかし、三越伊勢丹ホールディングスとJR西日本が、JR大阪駅前で共同運営するJR大阪三越伊勢丹の再建策を発表した。開業から わずか3年で大幅な事業縮小を余儀なくされた。 3万3000平方メートルある売り場面積の約6割を撤去する。衣料品や雑貨は残し、収益性の悪い売り場は縮小する見通しである。 空いた場所に専門店を誘致し、同じ施設内にある専門店ビルのルクアとの一体的な運用を行う。約60億円を投じて今夏から改装に乗り出 し、2015年春に再開業する予定である。 百貨店の売り場面積が大幅に縮小することに伴い、三越伊勢丹の名称を取りはずす可能性が高い。 三越伊勢丹が大阪百貨店戦争で敗北した理由は下記の事が揚げられる。 オーバーストアによる競争激化である。JR大阪三越伊勢丹が開業したのは2011年5月。前月には大丸梅田店、12年11月には 阪急うめだ本店が増床でグランドオープン、13年4月にはグランフロント大阪の開業で、大型商業施設の増床や新設が相次いだ。 次に、有力テナントを集められなかった。大阪駅周辺で最後発の出店で、集客力のある有名ブランドなどは大丸や阪急などに押さえられて しまった。 さらに、三越伊勢丹ブランドが大阪では浸透せず、売り場づくりの失敗である。明確な店舗のコンセプトが薄れ、魅力に欠ける店舗となっ た。同店は旧三越時代に決めた案件。経営統合した旧伊勢丹の両社の統合作業が進む中、それぞれの都合を考えた結果、中途半端な 店をつくった。 当初計画の年間売上高は550億円だが、初年度から310億円、303億円、320億円と大幅に下回り、赤字が続いた結果、運 営会社は債務超過に陥っている。今回の再建策により、15年度にJR大阪三越伊勢丹とルクアを合わせて売上高800億円を達成し、 黒字転換する計画である。 昨年度の売上高は660億円で、140億円の上積みが必要だ。百貨店は豊富な品ぞろえが魅力の一つだが、売り場を大幅に縮小する 中で集客力を高めるのは困難が予想される。 大阪エリアの百貨店競争は今後ますます、厳しさを増していくとみられる。今年3月には阿倍野にあべのハルカス近鉄本店が 日本一の超高層ビル・300mに日本一の床面積10万平方メートルで全面開業する。 今秋には大丸梅田店が大型改装を行うことを検討している。さらに今年4月からの消費増税で消費環境が悪化することは必至である。 「百貨店と専門店を融合することで、専門店だけの集合体とは異なる新しいものができる」と関係者は期待するが、もしそれが実現できなけ れば、完全撤退の可能性もありうる。
(大阪梅田・2012年度百貨店店舗別売上高)阪急うめだ本店 1880 億円(2013年速報) 阪神梅田本店 892 億円 大丸大阪梅田店 628億円 三越伊勢丹 303億円 ルクア(専門店) 350億円 グランフロント(専門店) 500億円(2013年予想) (グランフロント) (大丸と阪急百貨店)
(三越伊勢丹・ルクアとグランフロント)
(阪神百貨店)
(阪神百貨店・建て替え仕様)
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