大阪富国生命ビル、地下難工事を経て梅田・超高層ビル街に完成

 

 富国生命保険相互会社が、大阪・梅田の超高層ビル街で建設を進めていた超高層ビル「大阪富国生命ビル」・132mが12月9日にグランド

オープンし、梅田の超高層ビル群は、さらに厚みを増し、地下街ネットワークもさらに充実した。

梅田の地下街「ホワイティうめだ」と接続する空間には、6層吹き抜けで癒しと憩いを提供する大型アトリウム「フコク生命(いのち)の森」を設置

し、新たな待ち合わせスポットとして一般開放している。天空へ伸びる森の「大樹」をイメージしたフランス人建築家、ドミニク・ペロー氏による外観

デザインの具現化した。  

 大阪富国生命ビルは、1964年竣工の旧富国生命ビルを耐震性の問題から建て替えたもので、低層部には商業施設や金融施設、学校施設

が、上層階にはテナントオフィスが入る複合オフィスビルである。

 計画にあたっては、大阪市都市再生特別地区制度を活用し、隣接する地下街の防災性能の向上、隣接アーケードの補強と美装、産学連携施

設の導入や歩道状空地の整備など、さまざまな社会貢献を行うことで、1600%の容積率を確保した。

さらに、デザインアーキテクトとして海外の建築家4人によるデザインコンペを実施し、フランス人建築家ドミニク・ペロー氏が選定された。

 同氏の提案は建物全体を「大樹」に見立て、樹木のように広がりのある低層部から矩形の高層部へと伸びていくフォルムを形成している。

 また、低層部は樹皮の鱗を表現する凹形状ユニットを持つ等圧立体型ユニタイズドカーテンウオールで構成されており、凹形状部の見込み部

分と底面にステンレス鏡面材を用いることにより周囲の環境を映し出し、見る人の視線の動きや時間の経過により表情が変化する印象深いも

のとなっている。このカーテンウオールは総数3562ユニット、108の組み合わせパターンから構成されている。

 もうひとつの大きな特徴は、建物西面の足元に隣接地下街「ホワイティうめだ」と直結した天井高さ26mのアトリウムを持つことである。この空

間は地下街の防災上の一時避難場所になるとともに、地上と地下をつないで地下空間に自然光を注ぐ役割を担う。この大樹の足元には白神山

地のブナの森をグラフィックに表現したガラスフィンで構成された、幅35m・高さ20mの建築化された森「フォレストウォール」が設置されている

が、その実現にあたっては、数多くの実験・試験などにより安全性が確認された。このアトリウムは「フォレストウォール」や富国生命さまの環境

保全活動にちなみ、「フコク生命(いのち)の森」と命名された。

基準階オフィスフロアは7.2mスパン、奥行き13−16m、天井高さ2.8mの整形で、使い勝手の良い執務空間を東・南・西面に配置している。

最小小割3.6mモデュールに対応したフレキシブルな計画とし、建物中央北側にコアを有し、北側外壁面にWCを配置して外光の入る快適な空

間となっている。オフィスフロアは低層部各施設とは明確に動線が分離され、セキュリティーが確保されている。

 またLow−Eペアガラス、ペリメータエアフロー、外気冷房、屋上緑化などさまざまな環境負荷低減技術を採用し、CASBEE大阪Sランクを取

得した環境にやさしいオフィスビルとなっている。

 施工面では、地下ネットワークが張り巡らされた大阪・梅田の中心部・超高層ビル街における超高層ビルの建設で、難工事である上、

地下街、地下鉄、周辺施設への影響を最小限にとどめる配慮が求められ、工期面の要請もある。竣工までには、高度な技術とあわせ

さまざまな工夫や努力を積み重ねる必要があった。

 この工事の大きなポイントとして、まず「地下水への対応」が挙げられる。地下水の流入を防ぐには、新たに山留め壁を構築しなければならな

いが、地下街と隣接しているこの現場では簡単にそれができない。このため、既存の地下外周壁と耐圧盤を残しつつ、新築地下躯体をつくりな

がら山留め壁を構築していくことになった。

 さらに、地下水には浮力がある。このビルと接続している周辺地下街への影響を避けるためにも、建物の浮き上がりは絶対に抑えなければな

らない。旧ビルの地下外周壁と地下の底盤に1万2000m3のコンクリートを増し打ちして、新築・既存建物の重量バランスを考慮したことに加

え、74本のアースアンカー(長さ17m)も打設した。

 「地下街が3mm動いたら工事を止める」との条件のもと、施工中は地下街18カ所で毎月測定を行ったが、事前の入念な計算と綿密な施工計

画により、工事を止めることなく竣工まで走り抜いている。解体工事に着手したのは2007年11月。アスベスト(石綿)の解体もあったため、慎重

に作業を運び、解体中の08年7月からは新築工事にも取り掛かった。以降は躯体を組みながら、下の解体を進める形となり、地上4階部分にタ

ワークレーンを設置してからは急ピッチに躯体工事を進め、09年10月末に躯体工事を終えた。

 「大樹」をイメージしたカーテンウオールの取り付けも、この工事の大きなポイントとなった。低層部は不規則な凹形がある形状のため、取り付

けも手間を要するが、カーテンウオールの製作にあたっては、第三者機関で水密性や層間変位への追従性などの試験を4回繰り返した。

 

【工事概要】

・所在地=大阪市北区小松原町2番4号

・主要用途=事務所、店舗、学校施設等

・建築主=富国生命保険相互会社

・総合プロデューサー=三菱地所株式会社、株式会社三菱地所設計

・設計・監理=清水建設(株)一級建築士事務所

・デザインアーキテクト=ドミニク・ペロー アーキテクチュール

・施工=清水建設株式会社

・敷地面積=3889.05m2

・延床面積=68491.19m2

・基準階貸室面積=1479.28m2

・階数=地下4階地上28階塔屋1階

・最高高さ=132.06m

・構造形式=S造一部SRC造

・駐車場=143台(付置義務駐車台数)

・工期=2007年11月−2010年10月(解体含む) 

(阪急の超高層ビルと富国生命ビル(右端))


以下、「富国生命」ホームページより

 

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