ドバイ危機から一年、世界一の超高層ビルの現状


 ドバイ政府が昨年11月25日、政府系投資会社「ドバイ・ワールド」と、その不動産子会社「ナヒール」に対する債務の返済猶予を要請したの

が発端でドバイ・ショックが起こった。債務総額は590億ドルとされ、新興国や欧州の金融機関の株価が急落した。

 世界の金融市場を揺さぶったアラブ首長国連邦(UAE)の「ドバイショック」から1年を迎える。震源地ドバイは、現在も不動産バブル崩壊の後遺

症を抱える。

 ドバイショック後、国内で進んできた巨大プロジェクトは一気に止まった。

過去の建設ラッシュで、住宅やオフィスは供給過剰状態にある。地元の不動産会社によると、今年1月に完成した世界一の超高層ビル

「ブルジュ・ハリファ」(828メートル)は住居の8割が空き室である。不動産価格は平均で2008年のピーク時の4割に下がっ

た。

床から天井まで壁一面がガラス張りで、大理石と木のフローリングを施したワンルーム・マンションの家賃は、月6666ディルハム(1815ドル)

まで下がったし、1LDKでも1万ディルハムで借りられるという。ちなみに2LDKなら1万5833ディルハムである。

見事な噴水と花火でブルジュ・ハリファの完成を祝ってから10カ月、約900戸のマンションのうち825戸が空室のままだという情報もある。

  ドバイの高層ビル街に近いサトワ地区。工事現場の日雇い仕事にありつこうと、出稼ぎ労働者が集まっていた。ある労働者は「2年前は毎日

仕事があった。いまは週に2日程度」という。月収は約700ディルハム(約1万6000円)で、2年前の3分の1。見切りを付けて帰国した仲間も

多い。

 政府系開発会社「ナキール」の看板事業「パーム・デイラ」の工事は凍結したまま。100万人が居住できるヤシの木形の人工島の建設計画

で、再開のメドは立っていない。同社は先月、住宅建設など比較的規模の小さい8事業の再開を発表した。広報担当は「当面は短期事業に集中

する」と繰り返すだけである。

  一方、再建に向けた好材料もある。先月、ナキールの親会社「ドバイ・ワールド」は総額249億ドルの債務再編案の完全合意を発表し、回復

基調を後押しした。

賃料下落で、中小企業が続々と進出する。ドバイ統計センターによると、9月末の人口は187万人と今年に入って7%増えた。

 ホテル料金が低下し、「昨年は1泊350ドルした部屋が、現在は250ドルに下がった」とある旅行者がいう。今年前半の宿泊者数は前年同期

比で9%増えた。ブルジュ・ハリファでは展望台に上る観光客が列を作っていた。手頃な料金になり、観光客には歓迎される。

 「世界一」を冠した建築物を次々と作ってきたドバイの成長が「異常だった」と評し、「今後の開発は現実的なものになる」とみる関係者が多い。

大手不動産会社は「通信や道路など社会基盤の充実、治安の良さは大きな魅力。ビジネス拠点としての役割は今後も強まる」と述べ、成長は

可能だと指摘している。


ブルジュ・ハリファのフロア構成
Floors Use
160 and above Mechanical
156–159 Communication and broadcast
155 Mechanical
139–154 Corporate suites
136–138 Mechanical
125–135 Corporate suites
124 At the Top observatory
123 Sky lobby
122 At.mosphere restaurant
111–121 Corporate suites
109–110 Mechanical
77–108 Residential
76 Sky lobby
73–75 Mechanical
44–72 Residential
43 Sky lobby
40–42 Mechanical
38–39 Armani Hotel suites
19–37 Armani Residences
17–18 Mechanical
9–16 Armani Residences
1–8 Armani Hotel
Ground Armani Hotel
Concourse Armani Hotel
B1–B2 Parking, mechanical


inserted by FC2 system