ドバイ・超高層化都市への夢の跡


 ペルシャ湾岸の商業都市として急速に発展し、開発ブームに沸いたドバイが金融危機の影響で「バブル崩壊」に陥っている。ビル建設の

工事中断や規模縮小で、外国人労働者の解雇が続く。新しい高層ビルが立ち並ぶ街の中心部のすぐ近くの地区では、非正規・不法滞在

のインド、パキスタン、バングラデシュ、フィリピンなどの外国人労働者が集まり、スラム化している。

 サトワ通りに沿って1キロ南方に、高さが818メートルの高さを達成し、ドバイの発展を象徴する世界一の超高層ビル、ブルジュ・ドバイ

やドバイ・ワールドトレードセンターが見える。

 沖合の巨大人工島にホテルやマンションを建設し、ヤシの木をかたどった「パーム」、世界地図を縮小した「ワールド」もある。

サッカー場3個分、2万平方メートルを超す室内人工スキー場、ドバイ・モールは昨年11月に完成した世界最大級のショッピングモール。

サッカー場50個分の敷地にデパートや1200を超す店舗などが広がる。

しかし、この6、7年、次々と新たなビル建設が始まったが、昨秋に深刻化した国際的な金融危機が11月ごろからドバイにも波及し、

銀行融資も投資も不動産開発から引き始めた。

 外国人労働者はいずれもドバイにくる際、出身国でドバイの建設会社とつながる仲介業者に30万円から40万円の仲介料を支払っている

。その借金の返済には2、3年かかり、途中で帰れば借金だけが残る。労働者が不法滞在でも残らざるを得ない理由の一つになっている。

 ドバイは、ペルシャ湾岸南東部にあるアラブ首長国連邦(UAE)を構成する7首長国の一つ。面積は埼玉県とほぼ同じで、人口約145

万人。自国民が約2割で、8割は外国人。在留邦人は約2500人で自由貿易政策で金融、物流の拠点として発展し、石油依存から脱却。

外国企業誘致、リゾート開発、ブランド品の免税販売、国際的なイベント誘致などでも注目を集めていた。

 気候は、気温10〜48度。日中の最高気温の平均は1月が24度で、7月には41度に達する。日本との時差はマイナス5時間、

関西から直行便で、約12時間かかる。

 外国人の内、インド人が最も多く約60万人で、3分の2が建設労働者という。不法滞在労働者の数について、この問題に詳しい現地紙記

者は「10万人程度」と見る。

 ドバイでは5、6年前から不動産開発ブームが始まった直後、外国人労働者への賃金不払いが大きな問題となり、労働者のストが起こ

った。アラブ首長国連邦(UAE)の労働省は07年末に建設会社への指導を行い、賃金不払い問題は是正された。ところが、昨秋以来の

金融危機で、問題が再燃している。 開発バブルの崩壊は、正規の外国人労働者にも打撃を与えている。

 金融危機の影響でドバイで株価や不動産価格が下落する中、UAEの各銀行は昨年11月以降、完成前の不動産の開発・建設・投資に

対する融資を停止または縮小し始めた。不動産の関係者は「金融危機の後、この2カ月ですべてが変わった」と言い切る。

 ドバイの不動産はこの数年、開発計画が発表された直後に設計図の段階で完売となった。販売価格の5%から10%の契約金を払って

契約し、その後、不動産価格の上昇に応じて、1〜3カ月後に契約者が割増金を上乗せして契約ごと転売する。金融危機の前は1カ月で

契約金と同額の割増金を稼ぐ例が出るなど、投資ゲームとなっていた。

 1月になって大手外資系銀行HSBCがドバイの不動産が昨年9月から12月で「23%下落した」という調査を発表した。不動産会社や投

資家の間では「6割下落」というとらえ方さえ広がっている。

 民間不動産会社の不動産アナリストは「ドバイではまだ誰もが資金調達や転売など対応に追われている。本当の危機が表れるに

はあと2、3カ月はかかる」と見る。

先行きを懸念する一部の銀行家は、今後1年程度で不動産価格が8割前後下落しかねないと見る。

(ドバイの落日・建設中の超高層ビルは廃墟となるのか)

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