超高層化都市・ドバイ、世界金融危機の影響は?


 アメリカ発の金融危機が世界に広がり、原油高による余剰資金を支えに急成長してきた中東の湾岸産油国にも波及しつつある。ドバイ

など都市開発などへの影響が懸念される一方、石油依存から脱却するための産業の多角化も加速している。

 10月初旬、サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンの湾岸協力会議(GCC)諸国の株価は

暴落し、各国は政策金利引き下げなどの緊急対策や声明を相次いで発表。原油価格の下落もあり、「減速」は避けられないとみられる。

GCCは、イラン革命などへの危機感から81年、ペルシャ湾岸の6産油国で設立された協力機構で、本部はサウジの首都リヤド。統一通貨の

導入などをめざす。

 超高層ビルが建設ラッシュのドバイのあるアラブ首長国連邦(UAE)は、約326億ドル相当を銀行などに資本注入。財政相が「世界的な景気

後退を受け3〜5カ年計画を見直す」という。

 ただ、その度合いには差が出てきそうだ。UAEは国内総生産(GDP)に占めるドバイなどの開発事業の比率が高く、影響が大きい。

海外の投資マネーに支えられ、資産バブルに沸いたドバイだが、対外債務が圧倒的に多く、今後の資金調達が課題となる成長率

の鈍化は免れない。財政規模が小さく、在外資産も少ないオマーンとバーレーンの打撃は、比較的小さいようだ。

 200社以上の日本企業が進出し、在留邦人も約3千人と中東最大の日本人社会を形成するドバイの行方には、日本はもちろん、世界が

注目している。関係者は「金融の流動性がタイトになり、銀行の貸し渋りで大手ディベロッパーの借り入れも難しくなっている。みな様子見の

状況だ」と話す。

 ただ、「ドバイは金融危機から軟着陸で済む」とみている。「いざとなればUAEの首都アブダビがドバイに資金援助をして救済すると秘密

裏に束したとみられており、不動産建設も順延や規模の縮小が可能だ」という。

 オマーンの湾岸協力会議(GCC)諸国は、原油高で得た資金を元手に、水や電力の開発、巨大ビルや空港の建設などのインフラ整備を進め

る一方、観光や金融、重工業、商業、教育などの分野に力を入れて経済の多角化を急いできた。「いつか石油はなくなる。持続的な発展には

何が必要なのか、みな共通の不安を抱えている」。「ポスト石油」時代をめざす動きはさらに進みそうだ。

 その筆頭格ともいえるのがカタールで、世界有数の液化天然ガス(LNG)輸出国であり、エネルギー関連の企業を誘致して「エネルギー都市

」の構築をめざし、新空港の建設も進んでいる。

 「教育都市」への取り組みにも余念がない。アラビア語のニュース専門衛星テレビ「アルジャジーラ」を開局するなど、ハマド首長が開放的な

政策を進めてきたが、妻のモーザ妃が教育改革や女性の社会進出の旗振り役になっている。会長を務めるカタール財団が運営する「教育

シティー」には米国コーネル大(医学)、テキサスA&M大(石油工学)、カーネギー・メロン大(コンピューター)などの分校があり、「欧米と同

レベルの高等教育が受けられ、インドなどからのエリート留学生も多い」という。

 このほかにも、UAF・アブダビはドバイとは一線を画して自然を生かした環境配慮型の「文化・観光都市」をめざしており、仏・ルーブル美術館

の分館開設はその象徴ともいえる。人口の増加が著しく、若年層の失業率が高いサウジアラビアでは、雇用創出が最重要課題だ。外国投資

を呼び込むための「アブドラ国王経済都市」事業では、100万人規模の雇用を創出するとしている。ドバイの急成長の陰で地盤沈下したバー

レーンは、世界的に拡大を続けるイスラム金融やイスラム保険に軸足を置いて、金融センターとして再浮上をめざしている。

 石油などの天然資源や外国からの労働力だけに頼らず「自国民による、自国民のための産業を育成できるか」というGCC諸国の長期的な

課題に対し、世界的な金融危機がどんな影響を及ぼすのか、まだ不透明である。


(高さ・730mに達したドバイの世界一超高層ビル・ブルジュドバイ)

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