テロから7年、進まぬWTC跡地再開発


2001年のアメリカ中枢同時テロから9月11日で7年を迎えたが、倒壊したニューヨークのワールドトレードセンタービル(WTC)跡地の再

開発はアメリカ経済の悪化も背景に遅れが目立っている。                     

資金調達が難航する懸念や、鋼材など素材関連のコスト高が影を落としており、テロ後10年の記念式典には一部の施設しか間に合わない

見通しである。
 
ワールドトレードセンター 2012年」。跡地北側の超高層ビルに掲げられた巨大な看板は、工事完成予定が2012年であることを示して

いる。当初は2011年には大詰めを迎え、大半が完成しているとの青写真が描かれていた。

 しかし跡地を管理する当局は今年6月、中核施設の「フリーダムタワー(高さ542m)」などの完成時期と建設費の見通しが「現実的でない

」と指摘した。

 テロの標的になるのを防ぐ安全面の問題や、犠牲者の遺族の要望などによる設計変更に加え、建設費が大幅に膨らんでおり、全体の完

成は2010年代半ばにずれ込むとの見方が強まっている。

 原油相場の高騰に伴い、鋼材などの価格も上昇。記念博物館などを含む総工費は当初見込みの150億ドル(1兆6千億円)から、

最大30億ドル(3200億円)超過すると指摘される。博物館の運営などを担う非営利団体副代表のメンデス氏は「建設業界全体が高コスト

にあえいでいる」と嘆く。9月末に新たな完成時期や総工費の予想が示されるが、再開発の行方には不透明さが付きまとう。


11日、7回目の追悼式典が営まれたワールドトレードセンター跡地。数千人の遺族が献花した慰霊の場所には、まだ何の建築物もなかった。

 6万5千平方に及ぶ跡地は今も、「巨大な空洞」と地元のメディアに呼ばれている。追悼施設・博物館と「フリーダムタワー。」など超高層

ビル5棟、交通ターミナル施設からなる再建は当初、10周年の2011年前後の完成をめざした。その実現を信じる人はもはやほとんどいない。

 遅れの理由の一つは、あまりに豪華で野心的なデザインの建築をそろえたこと。屋根が鳥の羽のように開く交通夕ーミナルはその代表格。

予算も工期も膨らみすぎ、今年やっと「現実的な設計」(ニューヨーク州知事)に縮小された。最優先されるはずの追悼施設は、ターミナルと

ほは一体となった構造のため、連動して工期が遅れた。開発を担う港湾公社は今年6月、二般オープンは10周年に間に合わないかもしれ

ない」と認めた。
 
追い打ちをかけるのは近年の資材価格の高騰と景気の停滞だ。世界貿易センター追悼財団はすでに全米と世界の8万人以上から3億5

千万(約380億円)の寄付を集めたが、実際の事業費はそれをはるかに超える見通しだ。超過分をだれが負担するのかは決まっていない。

 新たな超高層ビル群も、完成後の想定家賃が高騰しているうえ、新たなテロの不安もぬぐえないことから入居者が決まらない。市と州政

府以外で最大の借り主になるはずだった証券大手メリルリンチは今夏、家賃交渉が決裂して入居の断念を表明した。
  
ブルームバーグ市長は10日、「これ以上の言い訳は許されない」として追悼施設を10周年までに建設することを絶対目標にするよう関係組

織に呼びかけた。


(WTCの現在の跡地、再建工事が大幅に遅れている。)

(WTC跡地の完成予想図)

(完成後のロウアー・マンハッタン全景)

(TOPページ)

inserted by FC2 system