中国・四川大地震の起きた12日午後2時半(日本時間同3時半)ごろ、普段なら人のいない上海人民広場は、あちこちの超高層ビルから
飛び出した人々で埋まった。上海の西1800キロ超にある四川省ぶんせんで起きた大地震により超高層ビルが揺れたためだ。超高層
ビルが密集し、2年後の万博開催を目指して地下鉄、道路工事が進行中の上海は地震に弱い都市といえるかもしれない。
2005年末の統計をみると、上海市の高層ビル(20階建て以上)はすでに4762棟に達している。上海はその名が示す通りかつて海の
底だったが、中国一の大河、長江(揚子江)が、チベット高原や四川省の山岳地帯などから大量の土砂を運んできてここに堆積させた。
西暦800年頃の時代、中国の海岸線は上海よりもずっと上流の鎮江や揚州付近だった。
つまり厚い堆積土の上に上海はある。そのため、高層ビルをしっかりと支える杭を打ち込むための硬い岩盤は奥深い地下になる。土壌
も「50センチも掘れば水が噴き出す豆腐状態」と建築の専門家は指摘し、極端に軟らかい。上海はすでに超高層ビルの建設ラッシュで
地盤沈下に悩んでおり、地下水くみ上げを厳しく制限しているほか、大量の水を地下水層に注入して沈下を抑える方策をとっている。
それでも超高層ビルが林立したのは「摩天楼は国際都市のシンボル」と発展が優先されたことと、「上海には地震がない」という確信が
あったからだ。
だが、四川大地震の日、震度2程度の揺れに人々は人民広場に向けて突っ走った。「ついに大地震」という恐怖が頭をよぎったのは間違
いない。
上海市政府は「1992年以降に建設された高層ビルは烈度7(日本の震度5)までは安全な設計」と強調している。実は上海でも地震が起
きており、最近では12年前に震度3程度の揺れが観測されている。記録を見る限り小規模地震ばかりで、震度4弱を上回ったことはないと
されている。ビルの安全基準を「烈度7」と設定しているのはそのためだ。阪神大震災では、神戸の中心部の超高層ビルも、震度7に
さらされたが、崩壊することはなかった。地震の質(周期など)にもよるが・・・・。
上海は2年後の万博開催を控え上海では地下鉄工事や道路工事があちこちで行われており、街全体が工事現場のようになっている。
そんな脆弱な状態で烈度7(日本の震度5)を上回る地震が起きれば、上海は壊滅状態になると考えられる。