ワールドトレードセンター、「背骨」断裂でテロ崩壊説


 アメリカ9.11同時多発テロでニューヨークのワールドセンタービル2棟が崩壊した理由について、火災が原因とするアメリカ当局と異なる

新たな見方を、筑波大の研究者が示した。旅客機の衝突でビルの「背骨(コア柱)」の鋼材がバネのように伸び上がって砕け、接合部が外れ

崩壊につながったという。

 旅客機2機は北棟の93〜99階付近と、南棟の78〜85階付近に突っ込んだ(各110階建て)。1時間余りたった後、2棟は猛烈な勢いで

崩れた。

 アメリカ連邦緊急事態管理局(FEMA)の調査報告書(02年)は、航空燃料による火災の高熱で鉄骨の強度が落ちてビルが崩壊した、

とした。だが、崩壊直前に下層階の窓ガラスがたくさん割れたほか、地下駐車場で多くの車が大破したとの証言など、火災説では説明しにく

い現象もみられた。

 筑波大システム情報工学研究科の磯部大吾郎准教授は、FEMAなどのデータをもとに南棟の崩壊をコンピューターで再現してみた。

 旅客機の衝突で、ビルの中央部を最上階まで貫くコア柱の鋼材47本の上から約4分の1のところが断裂。上層階の重量が減ったことで、

断裂部より下のコア柱がバネのように伸び、各階の床との接合部がほぼすべて外れてしまった。ビルは非常に不安定になり、わずかな力でも

崩壊する状態になったという。

 


アメリカ経済を象徴する世界貿易センタービルが崩れ落ちた米同時多発テロから6年。今も、1000人を超える犠牲者の遺体がまだ見つか

っていない。一方で、ビル跡地は再開発計画にようやくめどが立ち、2012年に主な施設が完成する予定である。

 テロ犠牲者の遺体鑑定を担当する関係者によると、今までに見つかった遺体やその一部は2万2千に及ぶが、DNA鑑定などにより身元

が判明したのは、ビル崩壊の犠牲者2750人のうちの1617人だけという。

 テロ犠牲者のDNAを鑑定する専用のプログラムを作成し、今も稼働が続いているが、高熱による遺体の損壊が激しいことなどから難航して

いる。跡地にまだ遺体が残っているはず、と再開発を進める市を非難する遺族もいる。

 その一方で、グラウンド・ゼロに建設されるビル3棟が、来年着工される見通しとなった。中心となる「フリーダムタワー」はすでに工事が始

まっており、追悼施設を中心に4棟の高層ビルが配置される。

 跡地再開発は、構想に時間がかかった上、資金不足やテロ対策のための設計変更が重なり、テロから6年を経ても基礎工事が続いている。

(新WTCの完成予想図)


 

<アメリカ同時テロ以降の経過>

2001年 9月11日 アメリカ同時テロ発生

        15日 ブッシュ米大統領が、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを最重要容疑者と断定

     10月 7日 アメリカ・イギリス軍がアフガニスタン空爆開始

     12月 7日 アフガンのタリバン政権消滅

2002年10月12日 インドネシア・バリ島で爆弾テロ

2003年 3月20日 イラク戦争開戦

      4月 9日 フセイン政権崩壊

      5月 1日 ブッシュ大統領、大規模戦闘終結を宣言

      8月19日 バグダッドの国連事務所で爆弾テロ

     12月13日 イラクのフセイン元大統領拘束

2004年 3月11日 スペイン・マドリードで列車同時爆破テロ

      7月22日 同時テロを検証していたアメリカ・独立調査委員会が最終報告書を発表

     12月 7日 アフガン正式政権発足

2005年 7月 7日 ロンドンで同時テロ

     10月 1日 バリ島で同時爆弾テロ

2006年 5月20日 イラク正統政府発足

      6月 7日 アメリカ空爆で「イラク聖戦アルカイダ組織」のザルカウィ容疑者死亡

      8月10日 イギリスで旅客機同時テロ計画発覚


(参考)FEMAによるWTC調査報告の概要

(FEMAのサイトより抜粋)


 2001年9月11日に発生したワールドトレードセンター(WTC)ビルヘのテロ攻撃の直後、米連邦緊急

事態管理庁(FEMA)と米国土木学会の構造部会(SE1/ASCE)は、ニューヨーク市やその他の連邦機関

、専門機関と連携し、WTC周辺の建物の性能を調査するために、土木、構造、防災の各分野の技術

者を派遣した。

 ニューヨークヘのテロ攻撃直後の出来事は史上最悪の建物災害とされ、米国内における単一の

建物崩壊による死亡者数としては最大規模になったWTC内にいたと推定され5万8000人のうち、

403人の救助隊を含む2830人は事件発生当日に命を失った。2機の旅客機がハイジャックされ、110

階建ての2棟のビルに1機ずつ衝突した。衝撃によって各ビルの受けた構造被害は、その後に発生

した火災と複合して、建物の全壊という結果を招いた。ビルが崩壊すると、破砕した建物の構成

材を含む重量物や粉じんが周辺の建物に落下し、衝突した。これによって、さらに大規模な付随

的な被害を引き起こし、場合によっては出火とそれに伴う崩壊となった。全体では、10棟の主要

な建物が全壌か部分崩壊に至り、WTC内の1200万平方フィート(約110万u)を含む約3000万平方フ

ィート(約280万u)のオフィススペースで業務を中断した。

 この調査の目的は、今回の一連の出来事によってもたらされた被害を調査し、データを収集し、

影響を受けた複数の建物の応答についての理解を発展させ、所見された要因を判別し、実施され

るべき研究を特定することだった。各ビルヘの航空機衝突の即時の影響、墜落に伴う火災延

焼、火災による構造物の強度の低下、そして各ビルの崩壊に結ぴついたメカニズムを調査した。

ビルがテロ攻撃を受けると、局所的な崩壊を含む広範囲な構造被害が、航空機の直接衝突した

複数階に発生した。この甚大で局所的な被害にもかかわらず、2棟の建物はしばらく耐え続けた。

しかし、複数の航空機が建物に衝突すると同時に、搭載されていたジェット燃料に点火した。こ

燃料の一部はただちに、衝突された階で起きた巨大な爆発の中で消費されたが、残った燃料は

床やエレベーター、設備シャフトに流出して出火したため、建物の上部全体に大火災が発生した

。延焼に伴い、火災は鉄骨構造物をさらに弱体化させ、最終的に全壊という結果を招いた。

 ビルの崩壊は、構造物をよく理解している専門家を驚かせた。直後には、ニューヨーク市当局が

今回の悲劇に対する理解を得るために広範囲の説明を行った。しかし、これらの象徴的な建物の

崩壊は、複数の被害を受けたビルに、同一ではない、複雑な出来事が伴っていた。

原因を見定めるために、FEMAとASCEは、高層建物設計の専門家、鉄骨と溶接技術の専門家、火災

や突風に関する技術者、そして構造調査や解析の専門家で構成されたビル性能調査(BPS)チームを

組織した。

 調査チームはWTCや救助の現場を視察した。メンバーは移動しながら、崩壊した構造物のサンプル

を検査した。また目撃者や、影響を受けたすべての建物に関係した設計者、施工者、維持管理者

を含む人々にインタビューを実施した。さらに建築関係書類を検討し、WTCの被害の分析を行った

情報と時間を活用しても、各ビルの崩壊に結ぴつく出来事の過程を最終的に見定めることは難し

いと思われる。しかし、次の所見と発見事項がなされた。テロ攻撃の結果、2棟の建物が受けた構

造被害はそれぞれ甚大だった。構造がこのレベルの被害を受けながらも長時間にわたって耐え続

けたという事実は、注目に値すべきものであり、建物内にいた多数の人が安全に避難できたこと

につながった。この種の出来事は相当な被害を生じるが、設計の際には一般的に考盧されない。

また、これらの構造物が今回のような被害にも十分に耐えるという性能は注目すべきものだ。

 損傷した構造物の予備的な分析は、構造物が長時間を耐え続けたという事実とともに、次のこ

とを示唆する。暴風や地震といったほかの大きな荷重ではなく、ある重大な付加的な荷重を受け

るまで、建物は被害を受けた状態で存続できた。しかし、構造物は次の瞬間、航空機衝突によっ

て引き起こされた火災による大きな同時多発荷重を受けた。

航空機に搭載されていた大量のジェット燃料は、各建物への衝突によって出火した。この燃料の

大部分は、直後に発生した大爆発の中でただちに消費された。残りの燃料は、建物を通って下へ

流れたか、航空機衝突から数分内に気化して燃焼したと考えられる。このジェット燃料の燃焼か

ら発生した熱自体は、構造物が崩壊を始める重要な原因ではないようだ。しかし、燃焼したジェ

ット撚料は建物の複数階の床に広がりながら、建物内の多くの家具や什器に撚え移った。

 複数階で同時多発火災を引き起こしたれらの火災からの熱エネルギーは、大きな発電所によ

って生産される電カに匹敵すると推測される。この熱は数十分間にわたって構造フレームの軟化

と弱体化を同時に進行させながら、損傷を受けた構造フレームに付加的な応カを発生させた。

この付加荷重とこれによってもたらされた損傷は、2棟のビルの崩壊を引き起こすのに十分なも

のだった。

 即時に崩壊せずに航空機衝突に耐えた2棟の耐カは、設計・施工特性の直接的な要素であり、衝

撃の影響と衝突によって引き起こされた火災が複合して崩壊に至るのは、2棟の脆弱性によるもの

だった。ほかの設計・施工特性を備えた多くの建物は、2棟と比較してこれらの出来事で崩壌する

ほど脆弱だったかもしれないし、それほど脆弱ではなかったかもしれない。建物の設計や施工の

法令への適合性を評価すること、あるいはこれらの特徴の妥当性を判断することが、この調査の

目的ではなかった。しかしこの調査の間に、建物の構造特性と耐火特性を検討した。今回の調

査は、標準以下のものとして扱われるある特殊な構造特性については明らかにならなかったが、

実際には設計や施工の多<の構造特性と耐火特性が法令の最低条件より優れていることが判明した。

 可能な限り建ち統け、建物内の多くの人が避難できたことにつながったいくつかの建物設計上

の重要事項となる特徴が確認された。下記の通りである。

・鉄骨架構形式の頑健性(ロバストネス)と冗長性(リダンダンシー)

・非常誘導灯の設置された適切な避難階段

・テナントに対する緊急避難訓練の遂行

 同様に、衝撃を受けた階とそれより上の階にいた犠牲者が、安全に避難できなかったことや

彼らの行動を阻害するような崩壌を起こした可能性のある設計特性が、いくつか確認された。

しかし、これらの特性は、設計の欠陥または将来の建築法規の中で禁止事項として扱うべきでは

ない。むしろ、これらは今回の建物やほかの建物でどのように挙動するかを理解するために、も

っと詳細に評価されるべき特性だ。

下記に列挙する。

・ほかの構造形式と比較した場合の、今回の建物に使われている鉄骨床トラス

 形式とそれらの構造的頑健性と冗長性

・避難経路の周囲に設置された衝撃抵抗壁(耐カ壁)

・突風や衝撃のような危険に対して抵抗するように設計された耐火抵抗カ

・構造物全体に非常階段を分散するのでな<、建物の中心部に非常階段を集約

したこと

 この調査の間に、これからの建物を今回のような攻撃にもっと強くなるように、建築法規を変

更するべきかどうかという問題は、頻繁に検討した。航空機のサイズによるが、すべての構造物

が崩壊することなく、高速で飛ぷ航空機による衝撃の影響とそれに続いて起こる火災に抵抗する

ように設計・施工する条件を設定することは、技術的に実現不可能かもしれない。

 さらに言えば、そのような構造物の施工費は非常に大き<なるので、 この種の設計目的を

実現するのは不可能だ。

WTCビルに対する攻撃は設計思想に疑問を投げかけることになったが、建築法規にそのような条件

の考慮を勧めるような、特定の建物に対する攻撃の可能性があるかどうかを決めるには、データ

が不十分だと調査チームは考えている。任意の特定の建物に対しては、今回のような攻撃の可能

性は全く考慮されない<らいに十分に低いという意見を持つ人もいる。しかし、個々のビルデベロ

ッパーは、特にそれらの設計や利用者の性質によっては、そのような不測の事態に対して冗長性

や頑健性を改善する設計対策を考慮したいと思うかもしれない。火災や衝撃損傷にさらに抵抗し

、建物利用者の避難をより助けられる建物をつ<るように建築法規の概念をい<つか変更すること

は可能だが、調査チームは任意の特定の法令を変更する前に、これらの概念に関する技術的、思

想的、経済的な研究を行うべきだと考えている。

この報告書は、特にそのような追加の研究を勧めている。崩壊やほかの建物応答に関する技術上

の詳細な内容が一段と解明された中で、将来の建築法規の改訂に考慮されるかもしれない。

 

(以下の図面、FEMAのサイトより抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                     

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