ドバイ、世界一の開発ラッシュで疾走するアラブの星


 ドバイで建設中の超高層ビル、「ブルジュ・ドバイ」が、7月21日に高さ512.1m(141階)となり世界一の高さを達成した。

完成すると、高さ世界一となる高さ800メートル以上、160階建てのビルとなる。現在世界一である台湾の「台北101」の508メートルを

はるかにしのぐ。このビルは、低層階はジョルジオ・アルマーニがデザインする「アルマーニホテル」、高層階以上は住居として使用される。

モデルルームでは地表800メートルでの日常生活を体感できる。窓外のダイナミックな風景を体験できる。しかもドバイでは100階建て

以上の超高層ビルが2015年までにあと5棟建設される予定。 超高層ビルでの生活が当たり前のものとなりつつある。現在UAE

(アラブ首長国連邦)で進行しているプロジェクトの総額は約60兆円といわれる。この大半がドバイに集中している。世界のクレーンの

3割が集まっているといわれる。

 オフィスビルだけでなく、マンションや戸建て住宅も建設ラッシュ。「確かに今は住居が足りない」と、現地の駐在員は断言するが、10年

までに「17万〜24万戸が市場に出る」という。ドバイの人口120万人のうち8割が外国人で、彼らのほとんどが低所得の出稼ぎ労働者

であることを考えると、需要と供給に疑問がある。それでも、住み手がいると踏んだ不動産の買い手は後を絶たず、物件価格は値上がり

する一方で、ビジネスマン向け高級ホテルの1階には、ブティックの代わりに不動産屋が多く陣取る。

 アラブ首長国連邦(UAE)は北海道ほどの大きさで、アブダビ、ドバイなど7つの首長国から構成される連邦国家で、人口は約410万人。

国家元首(大統領)はアブダビ首長、副大統領兼首相はドバイ首長が就くことが慣例となっている。

 主要産業は石油で、UAEの原油輸出量は世界6位。日本の原油輸入の4分の1をUAEが占める。だが、UAE産原油のほとんどはア

ブダビ産であり、連邦財政の不足分をアブダビが補填するという仕組みが出来上がっている。一方ドバイでは石油がほとんど採れない。

数年で枯渇するとされ、石油に依存しない経済体制の構築を急ぐ。「ドバイモデル」の成功を受けて、資金の豊富なアブダビも自国の

開発を強化している。周辺国も競合政策を取り始めたことは将来のドバイにとって脅威である。

 ドバイは絶対君主制であり、国民の声が行政に反映されることはほとんどない。逆に所得税は課せられず、経済運営が順調なかぎり、

国民の不満は表面化されにくい。ドバイ人口120万人のうち地元住民は約20万人にすぎず、その大半は公務員。不足する民間部門を

外国人労働者に頼っている状態であり、サウジアラビアのような地元住民の失業問題もない。

 空港から市内に向かう車中から見えるのは、数え切れないほどの超高層ビルが果てしなく続く。ドバイの開発ラッシュのすごさは上海

と比較すればさらに際立つ。人口1800万人の上海は、建設ブームがピークを迎えた1997年のオフィスビルの新規供給面積が170万

平方メートルだった。今後3年間で供給予定のオフィスビル面積が同じく170万平方メートルと見込まれる。ところが、ドバイは人口わず

か120万人にして、現在250万平方メートルに相当するオフィスビルが建設中という。

 ナツメヤシの木をモチーフとしている“島”が造成され、人工の建造物としては、世界最大である。計画では三つ建設される予定で、

そのうち中央の島が一足先に造成が整い、住宅の建設・販売が始まった直径5キロメートルの「パーム・ジュメイラ」がある。

 月から見える建造物としては万里の長城以来だという。パームという名が示すように、この島のデザインはナツメヤシの木をモチーフ

としている。「アラブ人にとってナツメヤシは生命の樹である。理論上はより優れたデザインがあるかもしれないが、われわれにはこの

デザインが最もふさわしいと思った」と関係者はいう。太い幹の部分には高層マンションやホテルが、17本の“葉っぱ”にはプライベート

ビーチ付きの戸建て住宅が建築され、約7万人が居住する予定。第1期販売の4000戸は発売から3日で完売したという。

 現地の担当者は、「ベッカムやマドンナも購入した。すでに3倍値上がりした物件もある」と説明する。

 大規模開発はこれだけではない。世界地図を模った大小300の島々も建設中である。その名も「ザ・ワールド」。島を造成するだけで、

島に何をつくるか、どう使うかは購入者の自由。自分だけの城をつくるのもよし、ホテルをつくるのもよし。こんな夢いっぱいのプロジェクト

が好評を得て、1島当たりの価格は150億〜500億円と高額にもかかわらず、現時点で約半分の島に買い手がついた。造成完了は

2008年の予定である。

 観光・ビジネス客を合わせて、ドバイには年間650万人が訪れるが、ホテルの客室数は4万室しかなく、稼働率は閑散期でも90%を超

えるという。そこでホテルの建設も進んでいる。地元紙によれば、ホテルの大量建設の結果、客室数は2008年末までに1・5倍、2016年

末までに2・3倍に増えるという。

わずか120万人の人口に上海を超える不動産開発が行われている。もはや開発なしには国の成長を維持できないドバイ経済の現状で

ある。観光客を増やすため、エンターテインメントの分野でも仰天開発が目白押しだ。

 たとえば、2006年に砂漠のど真ん中に突如出現した人口スキー場は、気温50度の炎天下でも室内でスキーが楽しめる。2008年

開業に向け工事を急ぐテーマパーク「ドバイランド」が完成すれば、現在、世界最大のアメリカ・ディズニーワールドの2倍の面積となる。

総工費600億円をかけた海底ホテル(これも世界初)も2008年の開業を目指して建設中。「金持ちの国で受注する秘訣は、安値で

仕上げることではない。斬新な企画やデザインで、いかに彼らのプライドをくすぐるかが勝負」。よって、ドバイの開発計画は企画自体が

エスカレートする。

 空港拡張も大規模計画である。空の玄関、ドバイ国際空港は2006年に年間の国際線乗降客が約2800万人まで増加した。この数字

は成田の3300万人に迫る国際空港である。

 だが、5000億円かけて空港の規模を現在の3倍に拡張し、2010年にはロンドン・ヒースロー空港に匹敵する6000万人、2020年

には世界最大の1億人の乗降客数に対応できるようにする。さらに、すでに受注を発表したエアバス社の次世代大型機「A380」40機

以上を含む最新鋭100機を、3兆5000憶円を投じて購入する計画である。

 これだけでも十分スケールの大きい話だが、ドバイではもう一つの空港プロジェクト「ドバイ・ワールド・セントラル」も進行している。

ドバイ西側に位置する中東最大の物流の経済特区、ジュベル・アリ・フリーゾーンの隣接地に総額4兆円をかけ、現空港の10倍の規模

の空港を新たに建設する。狙いはもちろん「世界中の航空貨物の拠点。旅客向けでも年間1億2000万人の乗降客数に対応できるよう

にする」という。

  ドバイには人もカネも情報も集めインターネット、メディアなど業種別の経済特区を20も開設した。たとえばドバイ金融特区には、国際

金融センターとして名高いバーレーンから拠点を移す金融機関が続出している。ドバイは、アラブの星として疾走し続けている。

 

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