第30回世界遺産委員会で、ドイツの世界遺産「ケルン大聖堂」の登録抹消が論議さ
れようとしている。近くの超高層ビル建築に伴い、景観が破壊されたのが理由である。
紛争や災害で危機にひんする世界遺産が後を絶たないが、これまでは途上国が中
心で、先進国のケースは珍しい。抹消も前例がなく、関係者の間で波紋を呼ん
でいる。ケルン大聖堂は、1248年に着工され、1880年に完成したカトリックの大聖
堂である。高さ157メートルと、ゴシック様式の建築物としては最大級。第2次大戦中
の空爆でも大きな破壊を免れた。東京都庁のモデルにもなっている。
ライン川近くで巨大な威容を誇るケルン大聖堂は、世界遺産に96年登録された後、
早急な修復や保全が必要な「危機にさらされる世界遺産リスト」に04年掲載された。
対岸に高さ100メートルを超える4棟の高層ビル建設が計画され、「景観的価値を
損なう」と判断したためである。
2005年の世界遺産委員会は「適切な対策が示されなければ世界遺産登録を取り
消す手続きを開始する」と、ドイツに最後通告を突きつけた。
ケルン市は「遺産登録対象は大聖堂で、街並みではない」と反論する。しかし、ユネス
コ幹部は「近年、先進国の遺産について、景観の調和を重んじる雰囲気が強くなって
いる」と指摘。建物だけの保全で十分、といった理屈は通りにくくなっている。
今年4月に高層ビル1棟が完成したが、ケルン市当局は再開発計画をいったん
中断し、他のビルを高さ60メートル以下に抑えたり、大聖堂周辺の空間を広げたりなど、景観の調和を考慮した案を練り直している。
史上初の「遺産登録抹消」は相当な汚名になるため、世界遺産委員会は慎重に議論するとみられる。ただ、伝家の宝刀といえるこの制度を今回
、ケルンにちらつかせたのは、修復や保全の技術や財源も十分にありながら腰が重い大国ドイツへの警鐘の狙いがあると見られる。
日本でも京都の世界遺産の景観を守る為、超高層ビルの建設が規制されている。東京では、世界的に有名な世界遺産はないが、国内で有名な
建築物、例えば国会議事堂の景観が超高層ビルにより破壊されている。広島の原爆ドームも、周辺の高層マンション建設を懸念する声が地元で
出ている。
(超高層ビルにより破壊された国会議事堂の景観)
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