何故、東京は、国際都市になれないのか (最終回)


東京は、住宅・オフィス・公園においても質の向上をめざさなくてはいけない。

例えば、オフィスの一人当たりの面積は、23平方mで、ニューヨークの40平方mに比べ、かなり狭い。ニューヨーク・パリの公園面積も

20%を超えているのに対し、東京は6%にすぎない。

東京の住宅事情は、もっと深刻である。

遠距離通勤であるが、2000年の交通調査によると、通勤者のうち65%が通勤に片道 1時間以上を費やしている。防災面でも、78年の宮城県

沖地震を契機に、81年に建築基準法が改正されたが、それ以前に建てられた住宅は、約半分と老朽化が進んでいる。

また、最低居住水準(人世帯で29平方m4人世帯で50平方m)未満の世帯が、24%も占める。

したがって、「都心居住の推進」「老朽化した住宅の更新」「居住水準の向上」の点が、住宅の質の向上のポイントであることがわかる。

東京の住宅事情には、もう一つ重大な問題がある。「敷地の細分化」が進んでいる。

都内の市街地で、100u未満の小規模宅地の所有者が土地所有者の46%を占めていて、その割合が年々増加している。このままいくと、

数年以内には小規模所有者が過半数に達してしまう。小規模所有者が増えるということは、低層の木造密集市街地がますます増え、

市街地のオープンスペースがつくれなくなる、ということを意味し、美観・景観・防災上も、そして住環境改善の上から大きな問題となる。

道路や公園などの公共施設も造りにくくなり、をまちづくりが立ちゆかなくなってしまう。東京に大規模な超高層ビル郡がないのも、この点

がネックになっている。

敷地の細分化が進むと、小規模のビルしか建たないし、公共スペースを確保することもできない。

細分化が進む理由はなにか。一つは、相続の問題である。地価が高く相続税を払い切れないから、切り売りするケースである。そうでなく

とも、一部だけ売るケースがある。あるいは、ある土地を購入した人が、そのまま転売するよりも細分化したほうが売りやすいし、価額の

合計額も高くなるから細分化して売るケースもある。いずれにしろ、土地の価格が高いのが原因である。

たしかに、バブルが弾けてから土地価格は下がってはいるが、デフレ対策という意味から、土地価格はそろそろ下げ止まったほうがいいの

ではないかという意見もある。しかし今でもまだ、住宅地の価格は85年の水準にまでしか下がっていない。商業地こそ20年前の6割にまで

下がっているが、住宅地はそれほど下がっていないこれは、重要なポイントである。

標準的年収のサラリーマンが、年収の倍程度で専有面積75uの標準的なマンションを購入できるのは、都心から通勤圏一時間以遠に

なるのである。実際、東京圏ではサラリーマンの65%が、今でも通勤1時間以上のところに住んでいる。

東京の土地の異常な高さは、結果的に細分化を助長して、安全で快適な都市づくりを阻害してしまうことになっている。

防災面でも、火事は、住宅の密集地において、被害は大きくなり、、倒壊・延焼などの危険度も増大するし、避難も困難となる。火災の際の

消火活動だけでなく、その他の自然災害のときにも被害拡大防止のための活動が大幅に制約される。

過去においても、江戸明暦の大火では、2日間燃えつづけ、江戸市中の6割が焼失、死者10万人といわれる。ロンドン大火(1666年)では、

4日間燃えつづけた1万3200戸焼失したが、死者はなんと 6名しか出していない。

その理由は、ロンドンでは12世紀に、ときの市長が大火を防止するため、すべての家屋について「屋根は瓦、壁は石」と定めたので、延焼

速度が遅かった。それで死者がほとんど出ていない。

これに対して江戸の街は、超過密なうえ、木と紙でできているから、すぐに焼ける。しかも明暦の大火後も、たびたび大火があったにもか

かわらず、「火事とけんかは江戸の華」とバカなことを言っている。当時、武士の敷地は7割、多くの町民は3割の敷地に押し込められてい

たのも大きな要因である。しかも、いくら火事が起こっても、計画なしに拡張・発展を重ねてきたのである。

ここに諸悪の根源がある。江戸は無計画なまま繁栄し、18世紀には人ロに100万人に達した。当時のパリが54万人、ロンドンが86万人だっ

から、江戸は世界一の大都市だった。人口密度も跳び抜けて多かった超リスク都市であった。

現在、東京区部の一般市街地では、老朽木造建物が35%程度であるのに対して区部面積の4割を占める木造密集地域では47%に達して

いる。木造賃貸住宅戸数の率も、区部平均の23%に対して35%と高くなっている。

そして、民営借家における最低居住未満世帯の割合は、多い区域の25%を筆頭に、区部周辺部で高い数値を示している。居住水準の面

からも、木造密集地域の改善が必要である。これらの地域では、幅6m以上の道路も少ないし、空地率も低い。空から見るとびっしり

住宅が建てられていることがわかる。さらなる密集化・細分化を防止するため、建築敷地の最低限度引き上げに対する市民の理解が

必要である。、広い道路は火災時には延焼遮断帯としての役割のほか、避難道路・救援道路としての役割を果たす。環状道路を中心とし

た骨格道賂の一日も早い完成が必要である。

東京において、総面積6000haに及ぶ木造密集地域は、ほとんどが経済の高度成長期に形成されたもので、いわば20世紀の負の

遺産である。この負の遺産を解消して木造密集地域を改造することこそ、現在の世代から次の世代への義務ともいえる。

大阪も対岸の火事ではない。東京と同様、木造密集地が多く、早急の対策が必要なのである。

この十数年、東京における大規模な都市機能更新は、それなりに一定の「跡地」を利用して行われてきた。そのなかでとくに国鉄清算事

業は、汐留、南新宿、丸の内口、八重洲口、品川など、代表的な超高層プロジェクトの土地供給源としての役割を果たしてきた。

これからは、このような大規模な用地は提供されない。したがって、モデル地区としての大規模な超高層ビル街も期待できない。

木造密集地域の事業は、大規模な種地のない困難な事業となる。追い風は、人口がもう増えないということくらいだ。だからこそ、今まで

とは異なった実用的な制度が必要となるのである。

 

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