何故、東京は国際都市になれないのか (3)


国際都市の基本的なインフラ整備として、交通渋滞のない道路網が不可欠である。

海外のビジネスマンも、東京の交通渋滞が最大の欠点の一つにあげている。

東京の道路の歴史を考えるたびに、的確な計画をつくったにもかかわらず外圧や内圧、指導者の能力不足で実現することができなかった

、情けない現実にぶつかってしまう。しかし、大阪の幹線道路は、大正10年から、大阪市第一次都市計画で造られている。当時の市長は

先見性があり、住民運動による反対もあったが、全国的に有名な8車線の御堂筋を完成させている。

占領下で、占領軍の目が届かないという条件はあるが、地方都市でさえ、たとえば名古屋、広島、仙台などはがんばって、いずれも焼け跡

100m級の幅広い道路を完成している。

戦後50年以上たった今になって、人びとが事業を営み、生活しているところに、道路を通そうとするから時間も経費もかかる。東京も、

焼け野原であった戦後に100m道路を実現していれば、こんなことにはならない。

震災復興の際には国が事業費の7割を支出したのに対し、戦災復興では4割しか支出しなかった。震災復興のときに発行できた外債も、

戦災復興のときにはできなかった。戦災復興計画が実現しなかった理由は、一に占領体制、二に財政難であるという。

しかし、大阪が国の補助を受けたのは、わずか2%で市民の税金でまかなったという事例を考えると、指導者の力不足もある

東京は戦後50年以上を経て、ようやく戦後処理を行っているのである。首都の戦後処理を、国と国民はもっと意識すべきである。

 地方では、「新幹線、空港、高速道路は三種の神器だ。県としては、理屈抜きでこれらを揃えなければならない」と言っている。しかし、

その3種類とも揃えた結果はどういうことになるかは、目にみえている。地方出身の自分の地域しか考えない 議員の愚かな発想で、日本

全体のこと考えていないことは明白である。

 1972年以来30年近くにわたって日本の公共事業を支配してきたこの政策に、きちんと始末をつけないで、ダラダラと日本全国メリハリの

ない公共事業を続けているから、膨大な累積赤字の高速道路などを造ってしまう。物を生産して流通させなければ経済も生活も成り立た

ないわけで、全国の交通ネットワークが、国の経済力の、ひいては国民の生活水準向上の生命線をなしている。日本列島改造論その基本

を押さえていて、現代にも通用する。

しかし日本列島改造論の完成とは、ネットワークの末端までの個々の路線や特定の箇所のことではない。重要なのは、交通ネットワークの

結節点を完成させることなのである。また、大都市圏では、末端までネットワークを完成させ、それが地方までの経済効果をもたらす。

東京には1920年代の震災復興、40年代の戦災復興、60年代の東京オリンピックと、20世紀には、ほぼ20年ごとに首都東京への集中投資

を行なわれてきた。

ところがオリンピックの後、首都に対してを集中投資行っていない。その間、日本は列島改造論による地方投資を重点的に行ってきたのだ

。最近10年間を見ても、国が定める地方財政計画の投資的経費が1・7倍に増えているのに、東京都の投資的経費は逆にO・6倍に減って

いる。これでは東京がますます不便になるわけで、きちんと投資をして関東平野のインフラを改善すれば、全国が助かる。同時に、関西圏

にも投資すべきなのである。

日本列島改造論でつくった全国の地方空港は、定期便が少なくて困っている。にもかかわらず、東京の空港の発着枠が満杯であるため、

路線を開設できずにいるのだ。羽田の再拡張だけでなく、首都圏第3空港も必要となるだろう。成田空港は40年も農民との紛争をして、

いまだ2本目の暫定滑走路を完成できず、ジャンボさえ飛べない状態である。ニューヨークは3つの空港を持ち、フル稼働の状態なのである。

 しかし道路においてはその前にまず、現に存在するインフラをきちんと使いこなすところから始めるべきである。全国の自動車輸送は、北

から来ても南から来ても、関東平野で都心の渋滞に遭遇せざるを得ない構造になっている。トラックであろうと乗用車であろうと、せっかく

高規格の東名、東北など広域都市間高速道路を走ってきても、関東平野を抜けるときには皇居と芝公園の周囲を巡る首都高速道路の

都心環状線を通る以外にルートがないひどい状態なのである。

それにより、都心環状線を通る自動車の半分以上が、都心に用のない、ただ通過するだけの車となっている。そして都心環状線の渋滞が

そこと結ばれる放射方向の高速道路に波及して、都心環状線では慢性渋滞という交通情報が毎日繰り返されている。

首都圏中央連絡道路、東京外郭環状道路、首都高速道路中央環状線の3環状をほとんど 完璧な状態で完成させることが、関東地方を

通過する多くの白動車輸送のコストダウンにつながるのである。関東地方の車が助かるだけでなく、全国の車が助かるのだ。

東京23区の渋滞時平均走行速度は時速18q、マラソンの選手より遅い。これをせめて時速30qに改善すると、東京を通る全国の白動車

のドライバーの人件費とガソリン代が年間兆円も節約できるといわれる。まさに、省エネ時代に逆行しているのである。

大阪でさえ、全国の幹線(名神・北陸・山陽・中国・名阪)は完成された外環状線で連結され、都心の高速に全国を通過する車が入ることは

ない。都心の高速も、東京の高速より車線も多く充実され、しかも一方通行なので効率よく車がさばける。さらに、一般道路の幹線も環状

構造で車線も多く、一方通行であり、東京のように螺旋状ではなく碁盤状でさらに効率を高めているのである。

東京の首都圏環状方向のネットワーク形成が極めて不十分で、東京の渋滞箇所ワースト30のうち21までが、環状道路がらみの交差点で

ある。圏央道は、八王子やつくばなど首都圏外延部の都市群をネットワーク化する重要幹線である。また、東名、中央、関越、東北、常磐、

東関東、東金など広域都市問道路のネットワークを形成しているから、早急に圏央道が完成させ、都市部の通過交通を減少させ、都市内の

渋滞を解消させる必要がある。

高度成長期の一極集中、放射方向の都市構造が当然視されてきた。右肩上がりの人口膨張時代にあっては、放射方向の鉄道・道路整備

が重視されたのである。しかし、人口横ばいと経済低成長時代を迎えた今、戦後50年続けてきた市街地の外延的拡人型都市づくりに終止

符を打つべきである。新たな拠点都市を整備するよりも、今生きている都市の整備・生活の充実に力を注がなければならない。それぞれの

都市に住み、働く人たちのアメニティ一快適性や都市空間の質の向上を目指す都市づくりに転換する必要がある。

東京都は20年以上にわたって「多心型都市構造」を進めてきた。それは、丸の内一点集中の都市構造を、いくつかの副都心で形成された

都市構造に転換する」というするものだ

具体的には、「池袋」「新宿」「渋谷」という既存の3つの副都心、「上野・浅草」「錦糸町・亀戸」「 大崎」という新しい3つの副都心、さらには

「臨海副都心」を加えて計7つの副都心に業務・商業機能を重点的に配置する」というものである。

しかし、情報化時代・成熟社会を迎えて、丸の内本社に中枢管理機能を集中させる時代は去った。むしろ都心居住や情報交換、交流

、文化、楽しみなど、多様な機能が都心部に求められる時代に変わってきたため、ほぼ山手線内側のセンター・コア・エリア全体が、

従来とは異なった多様な都心機能を担うことが求められるようになった。

こうして「多心型都市構造」政策は、新宿副都心と未完成ではあるが、臨海副都心という2つの代表的な成果を残したが、今は、単に東京都

という、東西に細長い行政区域にとらわれず、関東平野全体を展望した都市構造を考えるべき時代になっている。

そして東京都心部は、首都高中央環状線の内側全体が核として、都心部の多様な機能を担う。ネットワーク型の都市構造を形成すべきで

ある。そして人びとの生活も便利になると同時、生活の質の向上もめざさなければならない。

 東京圏は、現在、世界最大の都市圏人口・2640万人(国連基準)の人口を抱えているが、2015年にはムンバイ(インド)、2020年には

ラゴス(アフリカ)にその人口を抜かれるが、むしろ歓迎すべきことである。マスコミが、さかんに世界一ということ誇るように報道しているが

、愚かなことである。先進国の人口では、やはり2000万ぐらいが限界で、それを超えるとインフラの整備が困難を極める。

また、土地の値段も、もっと低下すべきで、土地の値段の高いことをステータスにして自慢することは愚かなことである。それを喜ぶのは

不動産の業界ぐらい、都民の生活に打撃を与えてきたのである。

 都民はマスコミによる数字にごまかされないで、こんなものかとあきらめずに、もっと生活の質にこだわらなくてはならない。バブルの時代

さえ、都民は住宅・物価が高く、いくら給料が高くても、質の悪い生活を強いられてきたのである。  (次回へと続く)


(参考・阪神間の整備された高速道路)

(大阪・都心エリア)

 

 

 

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