東京は何故、国際都市になれないのか(2)


 日本が日本人の海外渡航を自由化したのは、1964年である。その時以来、日本人の年間海外旅行者数は 、100倍以上に増えた。

   28   日本           529万人

しかし、海外から日本に来る旅行客は10数倍にしか増えていない。

上図の各国別の観光客数について見てみるとフランスは年間7700万人、、スペインは5100万人、アメリカは4100万人 、イタリアは3900万人

の観光客を集めるが、日本は世界で28位、529万人しか集めていない。

日本からは1800万人が海外旅行しているのに、この程度の数字なのである。「日本は欧米から離れているから、それを割り引いて考えなけ

れば」などと考えてはいけない。中国3600万人、都市国家でさえ、香港は1600万人、シンガポール700万人が訪れているのをはじめと

して、タイ、マレーシア、などが日本より上位に名を連ねている。

これにはもちろん、世界の海外旅行客に対する日本の魅力に問題点がある。空港が不便だということにはかぎらないが、いろいろな問題

がある。最大のポイントは、その都市に観光客を吸引する力があるかどうかということだ。パリはルーブル美術館だけで年間300万人を集

める。フランスでは、大統領が変わるたびに美術館が一つできると言われるくらい、芸術に力を 入れてきた。実際、各大統領はポンピドー・

センター、オルセー美術館、ルーブル美術館にガラスのピラミッドをつくった。

美術館、博物館の魅力はパリにかぎらない。ニューヨークでも、有名な近代美術館やメトロポリタン美術館、印象派の絵画で有名な

ブルックリン美術館などがあり、マドリードのプラド美術館、ロンドンの大英博物館などがある。いずれも、その美術館を見るためにその

都市に行くだけの価値をもっている。また、迫力ある超高層ビル街を見るには、ニューヨーク、シカゴ、香港、シンガポール、上海など

がある。都市景観にしてもパリに匹敵する街並みを、プラハやプダペストがもっている。イタリアのローマ、フィレンツェ、あるいはギリシャの

歴史遺産は、ヨーロッパの近代諸都市のなかでももっとも魅力あるものである。さらにニューヨークは、ミュージカルの本場であり、

、ウィーンやザルツブルクは、音楽で人を魅了する。バルセロナのアントニオガウデ一のサグラダファミリア、イスタンブール は西洋と東洋

の融合文化で人を魅了する。 しかし、東京には、海外からみればその都市にいくだけの魅力がないのである。「東京タワー」があると

いう人がいるかもしれない。東京タワーが建設され、パリ・エッフェル塔の高さを超えたとき、世界から「日本の成り上がり根性が物笑い

の種」になった。それほど、エッフェル塔は世界から気にされる「芸術の象徴の塔」などである。

現在、東京には、世界一の600m・新東京タワーが計画されているというが、世界一と言ってるのは日本のマスコミだけで、世界一の

超高層ビルが高さ・1000mも視野に入れているときに、時代錯誤もはなはだしい。

 魅力にはいろいろなものがあるが、そういう魅力を、東京は、日本 を代表して造っていかなければならないのである。世界遺産にしても、

国内では関西に集中している状態なのである。

 また、ビジネス客から見れば、交通混雑と空港などが問題なのである。観光の面から見ても、空港は重要で、アジア各都市の外国人

観光客数を比較してみると、香港、クアラルンプール、シンガポールなど、空港がよく整備されている都市は観光客数が多いことがわかる。

下記の2005年のランキングでも、香港・シンガポールなどがベスト空港に名を連ねている。日本からは、関西空港が初めて選出されて

いる。関西空港は、アメリカ建築・土木学会から金賞を受けるなど、建築的な評価も国際的に高い。成田空港は、暫定的な滑走路はある

が、国際空港として世界標準の2本の滑走路もないということは、都心から離れていることも合わせて、最大の欠点である。

The World's Top 10 Airports - 2005

1    Hong Kong International Airport(香港)
2    Singapore Changi Airpor(シンガポール)
3    Seoul Incheon Airport(ソウル・韓国)
4    Munich Airport(ミュンヘン・ドイツ)
5    Kansai International Airport(関西・大阪)
6    Dubai International Airport(ドバイ・UAE)
7    KLIA Kuala Lumpur(クアラルンプール・マレーシア)
8    Amsterdam Schiphol Airport(アムステルダム・オランダ)
9    Copenhagen Airport(コペンハーゲン・デンマーク)
10  Sydney Airport(シドニー・オーストラリア)


しかし、日本という国が、東京における空と陸の渋滞を今まで放置してきたのは最大の問題である。

 東京には優れた都市計画がないと嘆く人が多い。だから「こんなゴチャゴチャした都市」になって しまったというのである。

しかし、ゴチャゴチャしてしまった理由は、その都市計画がないからではない。都市計画はあった が、実行されなかった。

一つの理由は、戦後、占領軍が都市計画に対して冷淡だったからであるとも言われる。占領軍最高司令官マッカーサーは占領初期、

日本の国力を回復することよりも、侵略能力を除去することに熱心だったという。

占領政策の原則にも、まちづくりとか復興とかいう項目は欠如している。欠如しているどころか、まちの復興については、道路の改良・舗装

さえ占領軍の指導・監督を受けるありさまだった。

しかし、マスコミは当時の都知事も復興事業に対する熱意が欠けていたと指摘している。

そういう不運、不幸な歴史から、東京の都市計画を改めて考えなおさなければならない。  (次回へと続く)

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