台湾の世界一・超高層ビル「TAIPEI101」、12月31日オープン
台湾・台北市で建設工事が進められていた世界最高層ビル「TAIPEI101(台北国際金融センター)」が、
12月31日、いよいよオープンする。1999年7月の本体工事スタートから約5年半が経過した。メーンコントラ
クターの代表企業を務めた熊谷組や、世界最高速のエレベーターを実現させた東芝エレベータなど、日本の
企業が中核を担い世界一の高さ・508m、地上101階の超高層ビルを完成させた。高さはもちろんのこと、
施工技術や設備にも世界一や世界初が目白押しのTAIPEI101は、日本の技術力が発揮された。
54万立方メートルにも上る大規模掘削作業から、工事は本格的に始まった。超高層棟には順打ち工法を、
先行してオープンする低層棟には逆打ち工法を採用、24時間体制で掘削は進められた。超高層棟部分は、
一日平均1580立方メートルという掘削スピードで掘り下げていった。
500メートルを超える巨大なビルを支えるため、超高層棟の基礎は厚さ3・0〜4・7メートル、施工面積は
、8349平方メートルという巨大なものになる。これだけの厚さになると熱がこもりやすく、品質に影響が出る可
能性も高くなる。温度解析に基づいた配合検討や、温度養生など、工夫を凝らして十分な品質を確保した。
地上の躯体部分には、鉄骨造メガストラクチャーが採用された。工場で製作された重量100トンにも及ぶ巨
大なメガカラムをクレーンで持ち上げ、慎重につなぎ合わせていった。
88階部分には、居住性を高めるためのTMD(振り子型制振装置)が設置された。RWDI社(カナダ)のグル
ープ会社であるモーショニアリング社による特殊な装置で、総重量650トンの巨大な球を建物の変動と反対
方向に揺らすことで強風による振動を30〜40%抑える。球は縁起を担いで金色に塗装され「金玉」と俗称
され、展望フロアからその姿を公開する予定である。
最も高い部分となる高さ45メートルのピナクル(尖塔)もこのビルの特徴的な部分である。躯体内部に施工
スペースを設けてピナクルを構築し、ジャッキアップで立ち上げていった。この作業は2日間に及び、昨年10月
9日、508メートルの高さに達した。
コンクリートの打設も、高さが上がるにつれてやりにくくなる。通常よりも強い圧力でコンクリートを送らなけれ
ばならなくなるため、ある程度の高さになると中継地点を設けるのが一般的だ。しかし、施工にはスピードも求
められる。このため、実際の施工時と同程度の圧力をかけた形で試験施工を行い、品質上問題が無いことを
確認して、地上から101階(高さ445メートル)までの直接圧送を実現させた。
海外の工事では、作業員の安全意識も日本とは大きく異なる。落下災害などを避けるため、安全意識の高
揚に日々努めたという。現地スタッフを日本の現場に派遣し安全への取り組みを肌身で感じてもらうなど試行
錯誤を繰り返し、指導した。
参画企業も複数国にまたがり、「協議する相手によって、中国語、英語などを使い分ける」など、余計な手間
もかかった。施工だけには止まらないさまざまな工夫と苦労を積み重ねて、TAIPEI101を完成させた。
建築主は、台湾の有力企業が結成したコンソーシアム「台北金融大樓股分有限公司」である。建設地は、
台北市の南東側に位置する信義区松智路8(敷地面積約3万m2)。
オフィスがメーンの超高層棟(地下5階地上101階建て)と、商業施設などが入る低層棟「ポディアム」(地下
5階地上6階建て)で構成される。総延べ床面積は41万2500m2で、単体の超高層ビルとしては、世界一で
ある。
メーンコントラクターは、熊谷組・華熊・栄民・大友為(KTRT)JVで、日本企業ではほかに、新日本製鉄(鉄
骨工事)、東芝エレベータが参画した。
ギネス社(英国)から世界最高速の認定を受けた東芝エレベータによる超高速エレベーターも、目玉の一
つである。地上から89階の展望台までの高さ382メートルをわずか39秒間で結ぶ。そのスピードは分速に
して、1010メートル(時速61キロ)である。快適性を損なわずにどうやってスピードを上げるかが最大の課題
であったが、。最先端の研究開発力を駆使し、ほぼすべて新技術の組み合わせでその課題を解決した。
TAIPEI101に設置されたエレベーターは計61台。このうちの2台(24人乗り)が超高速エレベーターである
。これまで世界一だった横浜ランドマークタワーの分速750メートルを大きく引き離す記録を打ち立てた。
駆動システムには、従来型の約3倍のパワーを持つ最大出力約1200キロワットの巻き上げ機を採用し、
これを1000分の1秒ごとに制御することで、高速かつ安定した運転を可能にした。
速度を上げる際にハードルとなるのが快適性の維持で、地上と展望フロアでは約48ヘクトパスカルの気圧
差がある。上昇するとS字カーブを描くように気圧変化が生じ、どうしても耳詰まり現象を起こしてしまう。この
ため、世界初となる「気圧制御システム」を導入、気圧の変化率を一定にすることで不快感を低減させた。本
体の「かご」の揺れも快適さに大きく影響する。揺れを打ち消すように重りを動かす「アクティブ制振装置」、振
動を吸収する構造を新たに取り入れた「新型ローラーガイド」などで、振動を大幅に抑えることに成功した。
緊急時の安全対策も重要な要素となる。計画速度の1・3倍(最大分速1300メートル)に達したときには、
自動的に安全装置が稼働する。エレベーターの総重量は23トンあり、この速度で落下すると1000度を超す
摩擦熱が発生するため、耐熱性に優れた特殊なセラミックを非常止め装置に導入した。このほかにも、油圧
緩衝器などで、二重三重の安全対策を取っている。
同社は、超高層ビル向けのエレベーター開発を進めるため、1997年に高さ157メートルの研究開発棟を
東京都府中市の同社工場内に整備した。ここで実物大の試験用マシンを製作、検証作業を進めた。実証でき
ない部分は、東芝グループの技術力を結集して解析を実施することで補い、世界一のスピードを確立した。
東芝エレベータ株式会社(社長:下野政之、本社:東京都品川区)は、世界最高速となる分速1,010m(時速60.6km)のエレベーターを開発し、台湾・台北市の世界最高層ビル「TAIPEI101」に納入しました。また、このエレベーターはギネス社により「世界最高速エレベーター」として認定されました。
今回導入した主な新技術としては、世界初となるかご室内部の気圧を調整する「気圧制御システム」をはじめ、かごに取りつけたセンサーからの振動の情報をもとに、逆方向に重りを動かしてかごの水平方向振動を打ち消す「アクティブ制振装置(アクティブマスダンパ)」、かご走行時の昇降路内の空気とカプセル表面の圧力解析を行い、形状の最適化をはかった流線型の「整風カプセル」などがあります。
当社が当ビルに一括納入する昇降機は、分速1,010m(時速60.6km)の世界最高速エレベーター2台の他、かご室を2階建て構造にしたダブルデッキエレベーター34台を含むエレベーターおよびエスカレーターの合計111台です。
当社は、こうした世界最高水準の技術開発とその応用により、高層ビル向けの超々高速エレベーターやダブルデッキエレベーター及び高速エレベーターの更なる販売活動を行っていくとともに、この技術を中低層ビル向けの規格形エレベーターなどに転用し、快適性・安全性を一層向上させ、今後もグローバル市場で積極的な事業展開を図っていきます。
<TAIPEI101>
TAIPEI101は、地上高が508mでマレーシア・クアラルンプールのペトロナス・タワー(452m)を抜いて、世界最高層のビルとなりました。当ビルは地上101階、地下5階の構成で、主に事務所として使用される計画です。また、低層階には昨年11月にオープンしたショッピングモールが入居しています。なお、当ビルの着工は1999年6月で、2004年12月に完成する計画です。
<ギネス世界記録について>
英国のビール会社であるギネス社が毎年発行している「ギネス世界記録」は、1955年に「ギネスブック」として発行を開始し、現在では23以上の言語に翻訳され100カ国以上で販売されています。「ギネス世界記録」は、収集した世界記録を仔細に確認し、信頼できる記録だけを掲載しています。
【2.基本仕様】
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