都市の雑学と超高層ビル(最終)、特集9・札幌


(歴史)

1869(明治2)年、明治政府は蝦夷地を北海道と改め、北海道開拓使を置いた。その後、北海道の開拓と警備

のために屯田兵を送り込み、さらに開拓民として外様の失業武士たちを札幌を中心に移住させた。厳寒の地

における開拓は厳しいものであった。しかし北海道には、積雪地帯に見られる暗さがない。それは指導者であ

ったクラーク博士の影響が大きい。在任期間はたった8ヵ月であったが、クラーク博士は弟子たちに自由と開

拓精神の尊さを教えた。クラーク博士が残した「ボーイズ・ビー・アンビシャス」はあまりにも有名である。

屯田兵とは、貧しい外様藩士に北方の警備を任せ、プライドを持たせるために呼称したものである。実際は、

兵というより開拓農民であった。明治に入り、政府の奨励制度によって、内地から多くの人間が北海道に入植

してきた。その多くは内地で財を失った貧民であった。いいかえれば、郷里の伝統や歴史から切り離されたと

ころから生活が始まった。

この問題と、いったん郷里を離れたことは、自らの歴史意識を無関心にする。つまり北海道の開拓という現

実は、過去とは関係がなく、本人の努力と才覚による。門閥も家柄も関係ない。ここに身分制度にはこだわら

ない長所が生まれた。しかし同時に、開拓と保護は官を尊ぶ風潮を生み、依頼心を醸成していった。

(気質)

北海道は、内地から入植してまだ1世紀ほどの歴史しかない。内地に見られる風土・風習などが成立する段階

ではない。内地のような因襲がなく、白主独立の家庭様式が形成され、若い両親だけの核家族であった。

北海道は住居スペースも広く、きわめて開放的である。家々には塀がなく、軒先で立ち話をしている姿を見

ない。雪が多くて寒いという事情もあるが、家の中に他人を入れることへの警戒心が薄いのである。男性も女

性も明るく、開放的で、とくに女性はハキハキとして物おじせず、男性に混じって平気で発言する。

北海道の女性は、男性に比べると実によく働く。開拓の歴史が、女性も男性と同様の重労働をするのが当た

り前という風土をつくってきたのかもしれない。自主独立の気風が強く、宗教や先祖を信仰する土地柄では

ない。古い家族制度に縛られない女性が多い。そうしたこともあってか、離婚率は全国トップクラスにある。ち

なみに離婚率の高い県は宗教心が低いことが多い。結婚式の形式に最もこだわらないのが北海道である。

愛の告白も女性からすることが多く、男性は待っているのが慣習となっているといわれる。

 女性のファッションを見ると、感度や感覚は本州、以上ともいえる。流行に敏感で、新しいものにすぐ反応し、

本州との差はほとんどない。北海道の女性のブランド志向は、一社で統一するのでなく、いくつものブランド

を使用し、頻繁にブランドを取り替える傾向がある。

開拓時代には貧困生活を強いられ、収穫されたものを焼くか煮て食べるしかなかった。つまり北海道の味は

素材のうまさで、調理の味ではない。厳しい寒さの中では、のんびりお国料理をつくっているわけにはいかない

。そうした中で、アイスクリームこそ、札幌が生んだ代表傑作といえよう。ちなみに北海道人の冬のアイスクリ

ーム需要は、他府県と比較できないほど高い。

(関西嫌い)

鮭、ニシン、昆布、とりわけ高価な日高昆布などを争奪した関西商人は、北海道人からあまりいい印象を持た

れていない。「昆布泥棒」と陰口をたたかれるように、道民の間には現在でも関西嫌いが根強い。関西弁を耳

にするだけで寒気がするとか、関西出身の営業マンは信用できないとか、悪い印象ばかりである。

北海道に赴任した関西人は、まず関西弁を話さないようにする特訓を受けなければならない。ただ、つき合い

に比例して誤解はなくなり、うまくいっているケースも多い。しかし、関西人は、北海道にたいして好感もってい

るが、片思いのようだ。また、関西人は、東京弁を耳にするだけで寒気がするという人も多く、東京人も同様で

あり、こちらは犬猿の仲であろうか。

北海道は、「三泣き」といわれる。転勤が決まったとき北海道は流刑の地というイメージのように左遷されたと

泣き、道民とのふれ合いに泣き、内地に戻るときに帰りたくないと泣くものである。

(ミニ東京)

東京に本杜がある企業の大半が札幌に支店を置き、表通りには、高層ビルが林立し、駅前には超高層ビル

も数棟、建っている。ネオン輝く夜の華やかさは、東京・大阪の都心並みである。北海遣の全人口の37%が

札幌に集中している。そのため、北海道を攻略するなら札幌一点に絞って活動すればよいと、短絡的な発想

で北海道にやってくるメーカーが多い。しかし札幌で有利なのは、先発と卸機能で制覇した企業に決まっている

。後発で札幌市場を攻略できた企業はほとんどない。要するに札幌はミニ東京で、北海道を代表する市場で

はないのである。後発企業はセカンドシティから参入すべきである。札幌を知ったことは北海道を知ったことに

はならない、ということを肝に銘じるべきである。

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