都市の雑学と超高層ビル、特集3・名古屋


(歴史)

 名古屋は、中山道、東海道、木曽街道、伊勢街道という重要な街道が集結し、諸国の情報がいち早く集まる

ため、天下の形勢を知る絶好の立地にある。ところが、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という三武将は、天

下統一にこの地を選ばず、安土、大坂、江戸に居をかまえ、名古屋を見捨てた。明治に入り、江戸が東京に

、京都が西京に改名されたが、愛知は都の中心・「中京」にならなかった。そこで名古屋の人たちは自ら、日

本の中心に位置するという自負から「中京」と呼んだのである。

そしてその頃から、東京や大阪・京都に対して強烈な対抗意識を燃やし、対等に渡り合いたいという欲望を抱

きながら現在に.至っている。ある意味で名古屋は、東西という日本人の意識から取り残されたといえるかもし

れない。

(風土・文化)

名古屋は典型的な内者市場である。「今後とも名古屋に住み続けたい」という割合が約9割にのぼる。東京と

大阪の人に、「住みたくない都市はどこか」とたずねると、名古屋と答えるが多い。

名古屋大学の学生の70%は、近隣出身者で占められている。これは 大都市圏の国立大学(東京・京都・大阪・

・神戸)では稀なケースである。しかも「就職希望はどこか」とたずねると、大半は名古屋の市役所・主要

企業を選ぶ。要するに、それほど名古屋地域から離れたくないという風土があるようだ。

また強力な地域共同体をつくり上げていて、そこへはよそ者を入れないという土地柄である。就職する場合も縁

故採用もするため、ますますよそ者は入りにくい。

 名古屋の夜は早く、繁華街でも早く閉まる店が多、そのかわり・朝は7時頃から多くの喫茶店が開店して

いる。名古屋は巨大な田舎都市というイメージが強い。名古屋人の半数以上が名古屋市に対して抱いているイ

メージは田舎」であり、内容を見ると、「偉大なる田舎」「ダサイ」「閉鎖的」「堅実」「ケチ」の順になっている。

 名古屋はご当地ソングのない街でもある。東京の粋・京都雅・大阪の情など、その土地の文化をひきず

っているのが流行歌である。東京では、東京・銀座・六本木・新宿、京都では、京都・祇園・大原・河原町・先

斗町、大阪では、大阪・御堂筋・新地(キタ)・宗右衛門町(ミナミ)などの歌詞が多く曲に使われているが、

名古屋だと思いつかない。文化という形のないものに価値を見出すのが苦手のようだ。文化不毛の地とい

われても仕方がなく、説によれば、題名に「名古屋」とつく歌謡曲は絶対にヒットしないジンクスがあるという。

名古屋人の典型的な気質は、行動を起こす前に必ず石橋をたたき、そのうえ誰かが渡らないと自分からは

動かない。会議などでも、名古屋人が最初に発言することはあっても、可もなく不可もない意見に終始するの

ことが多い。地元の学生に名古屋の印象をたずねると「保守的で新しいものを取り入れるのにきわめて慎重」

というのが大方の意見である。このことが、東京・大阪に比べ、超高層ビルの建設が遅れている要因でもあ

ろうか。最近は改善されたが、新しいファッションは東京・大阪から九州に行って、その帰りに名古屋に寄る。

名古屋で流行したら、東京・大阪ではすでに廃れているという。

名古屋は大都市でありながら、新製品のテスト・マーケティングが行なわれたケースは皆無である。先発参入

メーカーが絶対優位なエリアだからである。名古屋でトップメーカーが凋落したなどというケースはなく、トップ

企業安泰の地といえる。新製品の浸透率は都市にありながらそのスピードは遅く、需要変化はなかなか起き

ない。競争企業で下位のメーカーにこの地で逆転劇が起きることはまずないのである。

名古屋では、単身赴任者は相手にしてくれない。夫婦そろって名古屋に骨を埋めるという心意気がないとダメ

であるらしい。しかも奥さんが地域サークルなどに加入しないと商売はうまくゆかない。また他県からの転勤

者で、社宅や借家に住む人には周辺の商店は貸し売りをしない。家を持たない人間は信用できないという土

地柄である。ただし一流会社に勤務している人はその限りでない。

 また、現実には名古屋は東京に次ぐ単身赴任の街である。人□比では名古屋がトップで、単身赴任したくな

いが、妻や子どもが一緒にきてくれないという事情があるのかもしれない。このようなきまざまな要因から、名

古屋に永住を希望する他県人は少なく、名古屋体験者の大半は二度と名古屋に転勤したくないというのが本

音である。しかし名古屋に同化する気持ちと行動を示せば、親切な街でもある。

(豪華な冠婚葬祭)

 娘を嫁がせるとき、先祖代々の墓を偵察し、先祖を大事にしているかどうかをチェックする風土が残っている

。昔は、結婚式となると・家具一式を数台の車に積んで町を、パレードしたという。「荷出し」と呼ぶガラス張

りの嫁入道具トックが町をはしり、花嫁は・豪華な専用車に乗って嫁ぐ。新夫からの結納金が50万円の場合

、その10倍である500万円分をそろえるといわれる。

日頃、質素倹約に励んできたから、結婚式では、このときとばかりと見栄を張る。マンションは家と思わず・庭

付きの1戸建てに車がセットされていないと認められない。持ち家比率も高く、1人あたりの居住面積も広ヘマ

イカーの保有率も高い。この点は、東京・大阪に対し誇れるものである。

(大都市への感情)

 大阪は東京に対等意識を持つが、名古屋は優越感と劣等感の両方を持っている。優越感は、居住環境の

良さ、劣等感は、都市環境によるものだろう。たとえば、名古屋人が東京にくると、新宿の超高層ビルは、「あ

れはものすげえで。あれにくらべたら名古屋のビルは、みんなぺちゃんこだでいかんわ。」と思う人も多い。

 東京や大阪の話を例にするのはきわめて難しい。話をわかりやすくするために東京や大阪の事例を持ち出

したいが、よく考えてやらないと効果がなくなる場合が多い。東京弁や大阪弁は、印象が悪く、標準語で話した

方が良い。

(世界のトヨタ)

 初めて動力織機を発明した豊田佐吉は、「豊田式」と呼ばれる動力織機を開発し、世界一の評価を受けた。

そしてこれが自動車へとつながる。1904(明治37)年には日本初の国産車(蒸気)が、さらに3年後の1907(明治40

)年にはガソリン自動車第1号が登場した。自動車産業を始めたのは、豊田佐吉の長男である喜一郎で、今日

の「世界のトヨタ」の礎を築いた。

豊田市を核とした三河地域はトヨタ自動車の企業城下町である。とくに豊田市は、「トヨタがくしゃみをすると風

邪をひく街」といわれるほどである。自動車産業の従事者は市全体の70%、法人市民税に占める同産業の割

合は90%にも達する。三河地域は豊富な税収を頼りに、それぞれ独自の街づくりをやってきたが、その結果、

商業集積度の低い、華のない街になってしまった。

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